毎日山の旅日記

毎日新聞旅行

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関東安心安全富士山教室ステップ4・大菩薩嶺

 「富士山に登りたい」という人々が集う「まいたび(毎日新聞旅行)」主催の「安心安全富士登山教室」は2022年5月31日、ステップ4の大菩薩嶺(山梨県、2056・9㍍)登頂の日を迎えた。早朝、JR新宿駅に集合した参加者26人は2台のバスで一路、登山口の上日川峠(1580㍍)に向かった。曇りがちの空模様で、バスのフロントガラスに水滴がついた。しかし、山中の登山口に着くと、雨は上がっていた。
大菩薩峠は深い霧の中に 大菩薩峠は深い霧の中に
 一行はバスを降り、支度を整え始めた。豊岡由美子・登山ガイドは「靴ひもをしっかり結んでください」と声をかけた。参加者は靴ひもを締め直したり、ザックのベルトの調整をしたり、準備に余念がない。
 午前11時前、豊岡ガイドを先頭に歩き始めた。登山道は前夜の雨でぬれ、滑りやすくなっていた。「歩幅は狭く、1歩1歩丁寧に足を置いてください」「(前後の)間隔を空けてください。転ぶ時は1人で転んでください。前や後ろの人に突っ込まないように」。注意喚起が静かな森の中に響いた。
上日川峠のロッヂ長兵衛前で、下山の準備をする参加者の皆さん 上日川峠のロッヂ長兵衛前で、下山の準備をする参加者の皆さん
30分ほどで山小屋「福ちゃん荘」に到着した。ここには公衆トイレがある。「トイレに行ってください。山頂を過ぎるまでトイレはありません」「衣服調整もね」と声がかかった。それぞれが水分補給などをした後、再び出発した。唐松尾根と呼ばれる急斜面に取りつくと、岩場が出できた。「岩が滑りやすいので気をつけて」「ゆっくり呼吸を整えながら、斜面を登ってください」「足にしっかり体重を乗せてください」「歩幅を狭く、ちょっとずつ動いて」。矢継ぎ早に声が飛んだ。
山小屋「福ちゃん荘」。日本を代表する山小屋だ。 山小屋「福ちゃん荘」。日本を代表する山小屋だ。
 崖地の途中で、「(登っている最中に自分が)石を落としたら、(後ろを歩いている人に向かって)何と言いますか」と、豊岡ガイドが参加者に質問をした。参加者は首をひねった。ガイドは「『ラクッ』と大きな声で落石を伝えます」「それではここで、1人ずつ『ラクッ』と叫んでください。練習しましょう」。参加者は戸惑いながらも「ラクッ」「ラークッ」と大声を出した。その叫び声のたびに、豊岡ガイドは「いい声ですね」「声が小さいよ。もう一度」と呼びかけ、参加者からは笑い声が漏れた。和やかな雰囲気だ。
つづら折りの山道を登る つづら折りの山道を登る
 午後1時15分、一行は斜面を登り切り、山頂からほど近い巨岩「雷岩」に到達した。晴れていれば眼前に富士山が展望できるのだが、曇空ではそれは望めない。大菩薩嶺の山頂までは10分程度の距離だ。樹林に囲まれた山頂には、2本の山名標識があった。登山者はおらず、鳥の声もなく、静寂が支配していた。「山頂です。2000㍍です」。参加者はそれぞれ記念撮影をし、雷岩に戻った。
山頂に到着し笑顔の豊岡ガイド 山頂に到着し笑顔の豊岡ガイド
昼食休憩を取り、南西方向が開けた稜線を歩く。空が広く、気持ちの良い道だ。ところどころに岩場があり、慎重に歩いた。「下りはドスン、ドスンと下りてはダメです。膝の負担になります」。豊岡ガイドは声をかけながら歩いた。大菩薩峠(1900㍍)を経由し、午後4時半過ぎに上日川峠に戻った。豊岡ガイドは「曇り空で残念でしたが、富士山もお天気が変わりやすい。雨や風ですと、とても寒くなりますので、準備をお願いします」と伝えた。参加者は今後、ステップ5・富士山1~5合目、ステップ6・硫黄岳に挑戦する。体力と技術を身に付けて、富士登山を成功させたい。
トウゴクミツバツツジ トウゴクミツバツツジ
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〜山記者の目〜プロフィール
【毎日新聞元編集委員、日本山岳ガイド協会認定登山ガイド・小野博宣】
1985年毎日新聞社入社、東京社会部、宇都宮支局長、生活報道部長、東京本社編集委員、東京本社広告局長、大阪本社営業本部長などを歴任。2014年に公益社団法人日本山岳ガイド協会認定登山ガイドステージⅡの資格を取得。毎日新聞社の山岳部「毎日新聞山の会」会長

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