毎日山の旅日記

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神奈川県安心安全富士登山 ステップ②丹沢・大山

 江戸の昔から庶民に親しまれてきた大山(1252㍍、神奈川県)は、令和の世となっても登山者や観光客でにぎわう。富士山や太平洋の絶景を楽しめ、ケーブルカーを使えば山頂まで2時間程度で登ることができる。登山初心者が富士山を目指す「安心安全富士登山教室」(主催・毎日新聞旅行・東京)のステップ2は、大山が舞台となって久しい。
丹沢山系・大山の山頂標識 丹沢山系・大山の山頂標識
 2023年4月28日午前9時過ぎ、大山の登山口のひとつであるヤビツ峠に教室の参加者26人の姿があった。付近の広場で準備体操の後、2班に分かれてイタツミ尾根と呼ばれる登山道を登り始めた。 山頂へのコースタイムは1時間余り。歩き始めてすぐに急傾斜となった。先頭を歩く岡野明子・登山ガイドが「段差の低いところに足を置いてください」と声をかけた。足元にスミレの花が揺れていた。20分ほど歩くと、右手に太平洋の雄大な景色が見えてきた。岡野ガイドは「江ノ島が見えますよ。海からの風が気持ちいいですね」と振り返った。最後尾を歩く山添雄佑ガイドが「歩幅を小さく歩いてください。大まただとエネルギーを使ってしまいます」と声を上げた。
岡野ガイドを先頭にイタツミ尾根の急斜面を登る 岡野ガイドを先頭にイタツミ尾根の急斜面を登る
 道中には鎖のついた岩場もある。高低差は2㍍ほどだが、初心者はどう乗り越えたらいいのか、戸惑う場所だ。岡野ガイドが「安定したところに足を置いて、しっかり鎖をつかんで」と呼びかけた。「それっ」「ふんっ」と参加者たちが踏ん張る声が聞こえてきた。全員が鎖場を無事に超えたが、岩が露出した登山道は続く。「ちょっと岩場が続きます。頑張りましょう」と掛け声が飛んだ。  山頂には午後1時前に到着した。山頂標識でそれぞれが記念撮影した後は、昼食の時間となった。大山の頂(いただき)からは、丹沢山地の主脈の山々が見通せる。二ノ搭(1144㍍)、三ノ塔(1204㍍)、塔ノ岳(1491㍍)、丹沢山(1567㍍)と縦走路の峰が並ぶ。その向こうには白雪をまとった富士山が見えた。参加者の憧れであり、今夏の登頂目標だ。
慎重に岩場を超えていく 慎重に岩場を超えていく
 下山は、表参道からかごや道を経て、大山ケーブルカーの駅に向かった。急傾斜の岩場や階段が続く。岩が露出しているところでの転倒は大けがにつながる。「結構急な場所があります。ゆっくり歩きましょう」と岡野ガイドが注意をした。ストックの使用に不慣れな人もいる。「階段の隙間にストックを指すと、キャップが取れてしまいます。気を付けて」と声がけした。 富士見台と名付けられた展望台に到着した。江戸時代には茶店があり、人々は富士山の絶景を楽しんだという。大山が往時の人々の行楽の地であることを偲ぶ場所だ。富士を見つめながら、「この夏は、ぜひ富士山に登りたい」と意気込む人もいただろう。筆者も同行し、安全な登山のお手伝いをしたいと思う。
遠くに見える富士山(左)と青々しい丹沢の峰々 遠くに見える富士山(左)と青々しい丹沢の峰々
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〜山記者の目〜プロフィール
【毎日新聞元編集委員、日本山岳ガイド協会認定登山ガイド・小野博宣】
1985年毎日新聞社入社、東京社会部、宇都宮支局長、生活報道部長、東京本社編集委員、東京本社広告局長、大阪本社営業本部長などを歴任。2014年に公益社団法人日本山岳ガイド協会認定登山ガイドステージⅡの資格を取得。毎日新聞社の山岳部「毎日新聞山の会」会長

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