毎日山の旅日記

毎日新聞旅行

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北アルプス唐松岳 大阪・富士登山塾ステップ5

 北アルプス・唐松岳(2696㍍)の稜線からは、数多(あまた)の山が見渡せた。間近に五竜岳(2814㍍)がどっしりと構え、剱岳(2999㍍)は正面に鎮座している。遠くに見えるきらめきは富山湾の波光だろうか。新潟方面に目を向けると、火打山(2462㍍)、妙高山(2454㍍)、雨飾山(1963㍍)が連なっている。遠くには八ケ岳連峰、南アルプスの山々も横たわる。その向こうに、富士山の英姿が見えるではないか。威風堂々とした体躯(たいく)は、彼こそが「山の王」であることの証明だろう。
唐松岳を背景に「富士山に登るぞ」と意気込む参加者 唐松岳を背景に「富士山に登るぞ」と意気込む参加者
 「富士山、最高!」。中年の女性登山者がそうつぶやいた。彼女は「初心者のためのステップアップ 富士登山塾2019」の参加者だ。初めての北アルプスで、なんと富士山を目の当たりにできた。その喜びが言葉にあふれていた。「こんな風景を見ただけでも素晴らしいのに、来月はあそこに見える富士山に登るなんて……」と感激した面持ちだ。唐松岳に立った19人の参加者は、富士山登頂を目指して今年3月から毎月のトレーニング山行を続けてきた。低山から中級山岳へ。そしてついに北アルプスの山に登ることができた。はじめは新品だった登山靴も汚れが目立つようになった。だが、その汚れは経験の蓄積でもある。
どっしりとした山容が印象的な五竜岳 どっしりとした山容が印象的な五竜岳
 2019年7月下旬、大阪・梅田をバスで出発した一行は約6時間をかけて、長野県白馬村に到着した。旅館で前泊し、早朝6時半に出発した。ゴンドラとリフトを乗り継ぎ、八方尾根に取りついた。雨まじりの空模様の中、高山宗規・登山ガイドを先頭に黙々と歩く。雪渓も2度横切った。「(雪の上に)しっかりと足を置いてください」。高山ガイドがアドバイスを送った。同行した樺井美緒・登山ガイドが「さすが唐松岳。高山植物がたくさんある」と言う通り、登山道は花であふれかえっていた。ニッコウキスゲ、ワタスゲ、クルマユリ、オオバギボウシ、タテヤマウツボグサ、イワカガミ、シモツケソウ……紹介しきれないほどだ。
唐松岳の稜線上に咲く高山植物の女王・コマクサ 唐松岳の稜線上に咲く高山植物の女王・コマクサ
 4時間以上をかけて八方尾根を踏破した一行の前に、唐松岳のクジラの背中を思わせる稜線が現れた。その先には、巨大な三角錐(すい)の山頂が空の半分を占めていた。登山者が小さく見える。山小屋・唐松岳頂上山荘に荷物を置いて山頂へ。20分後には白いガスに覆われた頂に立った。「やっと着いた……」。安どの表情を見せた参加者たちは手早く記念撮影を終えて下山した。
ニッコウキスゲと白馬三山 ニッコウキスゲと白馬三山
 翌早朝、参加者たちは朝焼けの富士山を見ることができた。来月に迫った富士登山。半年間の努力の真価を見せる時は間近だ。日本一の山頂に立ち、無事に下山したい。私も参加者の皆さんに寄り添うつもりだ。【毎日新聞元編集委員、日本山岳ガイド協会認定登山ガイド・小野博宣】(2019年7月20日登頂)
朝焼けの富士山、登山者から歓声が上がった 朝焼けの富士山、登山者から歓声が上がった
【富士山へ向けて16 質問箱3】 Q 富士登山まであと1カ月です。心がけることはありますか。(女性)  A まずは太らないことです。できれば今の体重を少しでも落としましょう。体が軽ければそれだけ登りが楽になります。2つ目は風邪などを引かないこと。万全な体調で登りましょう。3つ目は、1カ月も間を置かずにトレーニング山行をしてください。低い山で結構です。これまでのステップで出かけた高尾山(東京都)や二上山(奈良県)に出かけて、山歩きの感覚を忘れないようにしたいものです。
八方池に白馬三山が写る 八方池に白馬三山が写る
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〜山記者の目〜プロフィール
【毎日新聞元編集委員、日本山岳ガイド協会認定登山ガイド・小野博宣】
1985年毎日新聞社入社、東京社会部、宇都宮支局長、生活報道部長、東京本社編集委員、東京本社広告局長、大阪本社営業本部長などを歴任。2014年に公益社団法人日本山岳ガイド協会認定登山ガイドステージⅡの資格を取得。毎日新聞社の山岳部「毎日新聞山の会」会長

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