毎日山の旅日記

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関東安心安全富士登山ステップ2・丹沢大山

丹沢山塊(神奈川県)の東部に位置する大山(1252㍍)は、美しい山だ。均整の取れた三角すいの山容はどこから見ても、一目で大山とわかる。高尾山(東京都、599㍍)からは、丹沢の峰々が屏風のように連なるのが見て取れる。その東端に大山が鎮座している。伊豆半島の海岸線からも、その威容はうかがえる。海上に浮かぶ巨峰といった趣さえある
大山山頂は、改装工事中 大山山頂は、改装工事中
何とも目立つ山なのだ。そのせいか、昔も今も多くの人々に親しまれている。かつては江戸町民の観光スポットとしてにぎわった。令和の世となっても大勢の観光客が四季を通じて詰めかけている。とりわけ紅葉は見事と言うしかない。
登山者にとっても身近な山だ。首都圏や静岡県東部在住なら日帰りができる。そのせいか、初心者からベテランまで大勢の登山者が行き来している。疲れてもケーブルカーで下山できる。それも人気の理由かもしれない。
ヤビツ峠レストハウスの看板。山中とは思えないにぎやかさがある。 ヤビツ峠レストハウスの看板。山中とは思えないにぎやかさがある。
22年4月17日午前、大山の登山口となるヤビツ峠(神奈川県秦野市)に、毎日新聞旅行がチャーターしたバスが到着した。31人の登山者がバスを降り立った。今夏に富士山登頂を目指す「安心安全富士登山教室2022」ステップ2の参加者だ。登山初心者が毎月開講される教室に参加、徐々にステップアップし、今夏の富士山登頂に挑む。
雨模様の中、靴ひもを締め直したり、トイレに入ったりと準備に余念がない。午前10時20分過ぎ、岡野明子ガイドが「さぁ、出かけましょう」と声をかけた。一行はイタツミ尾根をたどり、山頂を目指した。「木も石も濡れていますので、注意してください」「段差の小さなところを登ってください」。岡野ガイドが声をかけた。登り基調が続くが、下りの階段が現れた。「濡れた木の下り階段、(滑らないように)気をつけてください」とすかさず注意があった。
桜の下に見守られながら歩く 桜の下に見守られながら歩く
小さな鎖場もあった。岩の斜面に鎖がかけられている。高さは2㍍ほどだろうか。初心者は鎖に目を奪われがちだが、安定した場所に足を置くことが大切だ。参加者は順番に鎖をつかみ、岩に足をかけて体全体を持ち上げた。「富士山にも岩場があるので良い練習です」と岡野ガイド。午後12時20分、山頂に到達した。
鎖場を慎重に 鎖場を慎重に
山頂周辺で昼食の後、同1時20分ごろ、下山を始めた。急な斜面では、小田口尚史ガイドが「前の方と距離を空けて。すべって転んでもぶつからないように」と話した。小休止した際に、「立ったまま休むのを立ち休みと言います。富士山でも行います」と語りかけた。一部でぬかるんでいる登山道を慎重に歩き、午後3時半、中腹のケーブル駅に着いた。小田口ガイドは休憩時などに「次のステップは筑波山です。今日はスニーカーで来ている人もいて、筑波山もたいしたことはないと思うかもしれません。しかし、岩がごろごろしています」「筑波山は遠くから見ると優しい雰囲気ですが、登山道は楽ではありません」と告げた。参加者は緊張の面持ちで聞き、うなづいていた。真新しい登山靴の女性は「一生に一度でいいから富士山に登りたい。ステップ3にも参加して努力します」と意気込んでいた。
さぁ、下山だ さぁ、下山だ
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〜山記者の目〜プロフィール
【毎日新聞元編集委員、日本山岳ガイド協会認定登山ガイド・小野博宣】
1985年毎日新聞社入社、東京社会部、宇都宮支局長、生活報道部長、東京本社編集委員、東京本社広告局長、大阪本社営業本部長などを歴任。2014年に公益社団法人日本山岳ガイド協会認定登山ガイドステージⅡの資格を取得。毎日新聞社の山岳部「毎日新聞山の会」会長

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