毎日山の旅日記

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滋賀県毎日登山塾ステップ③ 蓬莱山

蓬莱山(ほうらいさん)とは、何と典雅な名前なのだろう。古代中国では、蓬萊は東の海上にある仙境であり、仙人が住むといわれていた。日本では富士山を指すという説もある。どこにあるのか、何が住むのか…想像が膨らんでしまう。 そして、その山は滋賀県大津市にある。標高は1173㍍。びわ湖の西方に屏風のようにそびえる比良山地の主峰のひとつで、堂々とした山容が目を引く。山頂付近にはレジャー施設が広がり、ロープウェイを利用すれば容易に到達できる。
蓬莱山山頂方面を見る。霧は稜線を超えられず、蒸発してしまう 蓬莱山山頂方面を見る。霧は稜線を超えられず、蒸発してしまう
2023年5月20日午前9時20分、JR蓬莱駅前には、登山服に身を包んだ男女20人の姿があった。登山初心者が今夏の富士山登頂を目指す、「毎日登山塾」(大阪・毎日新聞旅行主催)の参加者だ。4月に二上山(517㍍、大阪府・奈良県)、5月には大和葛城山(959㍍、同)を歩き、経験を積んできた。 高山宗則・登山ガイドが「(蓬莱山は)雲がかかっていますね」「体力がないと思う人は前に来てください」と声をかけて出発した。アスファルトやコンクリートの林道を1時間余り歩き、ようやく登山口にたどり着いた。小休止の後、「出発しましょう」の合図で踏み入った。
登山口まで舗装路を歩く一行 登山口まで舗装路を歩く一行
川音が響く登山道は荒れていた。大小の石や倒木、折れた枝が随所に転がり、歩きにくい。川を渡る場面では、「(川の中に)動く石があるので注意してください」と呼びかけた。崖地の通過の際にも「左側が切れています。安全に、確実に歩いてください」と警告があった。一行の表情にも緊張感が走った。
蓬莱山中にて、川を渡る 蓬莱山中にて、川を渡る
何度かの休憩を挟み、午後12時52分、稜線の小女郎(こじょろ)峠に到達した。参加者からは「良かった~」と声が漏れたが、風が強い。「(体の)上に何か羽織ってください」と高山ガイドが伝えた。汗があっという間に冷えて、寒気が肌を刺した。筆者もフリース、レインウェアの上衣を着込み、登山用の厚手の手袋を付けた。午後1時には、小女郎ケ池(こじょろがいけ)に着いた。山上の池だ。大蛇と人妻の許されぬ恋の伝説があるという。霧に包まれた池は幻想的で、水面から蛇の鎌首が現れそうだ。ここで昼食休憩の後、山頂を目指した。
小女郎ケ池でレインウェアを羽織って昼食を取る。 小女郎ケ池でレインウェアを羽織って昼食を取る。
稜線上は小さなアップダウンはあるものの、歩きやすい道が続いた。午後2時、山頂に到着した。高山ガイドは参加者とグータッチし、「頑張りました」「お疲れ様でした」と激励した。皆の表情にも安どの笑みが浮かんだ。しかし、広い山頂は霧に包まれて、視界はない。「何も見えないね」と残念そうだ。比良山地は、日本海からの風に吹かれると霧が発生することが多い。水蒸気を含んだ空気が風に運ばれ、山にぶつかると上昇する。水蒸気は冷やされて、水滴となり雲や霧の源となる。富士山も霧や雲で覆われることはままある。山では霧は付き物といえる。
蓬莱山山頂は霧の中 蓬莱山山頂は霧の中
また、今回は防寒着としてレインウェアを装着した。初心者にはよい経験になったと思う。雨具やレインカバー、ヘッドランプなど登山の道具は山中で実際に使い、習熟しておくことが大切だ。富士山のような過酷な環境の中で、「初めて使います」では心もとない。本番までに一度は使い、慣れておきたい。
蓬莱山中腹は霧がなく、びわ湖がよく見える(ロープウェイより) 蓬莱山中腹は霧がなく、びわ湖がよく見える(ロープウェイより)
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〜山記者の目〜プロフィール
【毎日新聞元編集委員、日本山岳ガイド協会認定登山ガイド・小野博宣】
1985年毎日新聞社入社、東京社会部、宇都宮支局長、生活報道部長、東京本社編集委員、東京本社広告局長、大阪本社営業本部長などを歴任。2014年に公益社団法人日本山岳ガイド協会認定登山ガイドステージⅡの資格を取得。毎日新聞社の山岳部「毎日新聞山の会」会長

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