毎日山の旅日記

毎日新聞旅行

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関東青空のメスティン

 2021年の初登山は、お手軽なハイキングとした。行く先は、神奈川県・丹沢山地の弘法山(235㍍)だ。小田急線秦野駅から登山口も近く、浅間山(196㍍)、権現山(243㍍)、弘法山、吾妻山とちょっとした縦走も楽しめる。
弘法山山頂 弘法山山頂
 秦野駅から登山口まではアスファルトの道を20分ほど歩く。「弘法山公園入口」の看板が登山口の目印だ。登山口からは山道となり、急斜面となる。道幅が狭くなっているところもあり、転落に気をつけたい。つづら折りの道を約15分登ると、最初の浅間山に到着した。山名標の向こうには、富士山が鎮座していた。青空に威風堂々の富士の山。今年も何度か登ることになるだろう。
浅間山からの富士山 浅間山からの富士山
 さらに歩みを進めると、権現山の山頂に出た。ここは広場になっている。展望台やベンチもあり、家族連れが思い思いの時間を楽しんでいた。私もベンチに陣取り、ストーブ(登山用のガスストーブ)とメスティン(アルミ製の飯ごう)をザックから取り出した。今回のハイキングの目的のひとつは、山頂で煮炊きをすることにあった。  宇都宮市の飲食店「ムナカタ花園店」から提供された「健康シュウマイ」もテーブルに並べた。大ぶりの冷凍シュウマイが10個だ。中型のメスティンの底に水を高さ1㌢ほど張り、底網の上にシュウマイを置いた。ふたをしたメスティンをストーブの上に置き、強火で蒸した。
広々とした権現山山頂 広々とした権現山山頂
 同時並行してご飯を炊く。ご飯1合は自宅で水洗いし、水を浸透させたものを持参した。小型のメスティンにご飯を敷いて、水をかぶせてふたをした。まず、強火で炊き上げる。白い蒸気を盛んに吹き上げるようになったら、弱火にかけておく。10分経ったら火からおろし、メスティンを上下逆さまにしてタオルでくるむ。この蒸らしは15分かける。メスティンのふたを開ける時が一番の楽しみだ。「ちゃんと炊けているかな」と期待が膨らむ。そっとふたをずらすと、真っ白なご飯が炊きあがっていた。寒風に白い湯気が揺らぐ。炊き立てのご飯の上に、シュウマイを乗せて、醤油をたらしていただいた。シュウマイの肉汁と生姜の味が口中に広がった。遠くに丹沢の峰々を見ながらのぜいたくな昼食となった。
炊きあがったご飯と「健康シュウマイ」 炊きあがったご飯と「健康シュウマイ」
 コロナ渦で、仲間と連れ立って飲食店には行きにくい。そういう時だからこそ、青空の下での調理と飲食は楽しさを増す。食事後、手早く後片付けをして、家族連れにテーブルを譲った。この後、弘法山、吾妻山と縦走し、関東の名湯・鶴巻温泉に降り立った。公営の日帰り入浴施設「弘法の里湯」に立ち寄り、冷え切った身体を温めて帰路についた。  残念なことにこのハイキングの後、1都3県に緊急事態宣言が出された。またしても不要不急な外出はできなくなった。爆発的な感染拡大を考えれば、今は登山をすべきだはない。気兼ねなく登山道を歩ける日は必ず来る。それまでは辛抱したい。【毎日新聞元編集委員、日本山岳ガイド協会認定登山ガイドステージⅡ・小野博宣】
スイセンの花 スイセンの花
●メスティン● アウトドアブームの中、爆発的に売れているアルミ製の飯ごうのこと。スウェーデンの トランギア社製の製品が有名だが、品薄となっている。登山道具専門店の石井スポーツには、キャンパーズコレクションというブランドの製品があり、手に入りやすい。また、100円ショップのダイソーが税込550円のメスティンを売り出し話題になった。本文でご飯を炊いたのはダイソーのメスティンで、シュウマイを蒸したのはキャンパーズコレクションのものだ。ネットではトランギア社製のメスティンは4~5000円の高値で転売されている。だが決して購入してはならない。丹念に探せば、必ず手に入る。筆者は東京都心の登山道具店で、トランギア社の大型のメスティンを購入した。価格は税込みで2750円だった。
手前が中型のメスティン。奥はご飯を炊いている小型のメスティン。小型のメスティンはふたを黒く加工してある 手前が中型のメスティン。奥はご飯を炊いている小型のメスティン。小型のメスティンはふたを黒く加工してある
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〜山記者の目〜プロフィール
【毎日新聞元編集委員、日本山岳ガイド協会認定登山ガイド・小野博宣】
1985年毎日新聞社入社、東京社会部、宇都宮支局長、生活報道部長、東京本社編集委員、東京本社広告局長、大阪本社営業本部長などを歴任。2014年に公益社団法人日本山岳ガイド協会認定登山ガイドステージⅡの資格を取得。毎日新聞社の山岳部「毎日新聞山の会」会長

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