王子を訪ね、熊野の奥へと歩む祈りの道
高原熊野神社を後にすると、中辺路はいよいよ熊野の山中深くへと続いていきます。眼下に広がる山並みを眺めながら歩みを進めるこの区間は、単なるハイキングコースではありません。熊野信仰における「よみがえり」を求め、多くの巡礼者が祈りを重ねながら歩いた信仰の道です。各所にある「王子」とは、熊野の神々を祀る遥拝所であり、本宮へ向かう旅人たちは王子ごとに参拝を重ねながら、神域へ近づいて行きました。近露の里を過ぎると、古くからの暮らしが残る山村風景の中に、熊野詣が盛んだった時代の面影を感じることができます。名高い野中の一方杉を見上げる継桜王子は、長きにわたり旅人を見守り続けてきた信仰の拠点です。やがて到着する仲人茶屋跡は、かつて熊野詣の旅人が足を休めた場所。田辺の町から始まった旅は、この頃にはすでに俗世を離れ、熊野の信仰世界へ深く入り込んでいます。この区間の魅力は、美しい山間の景観と共に、王子ごとに祈りを重ねながら歩く、熊野信仰の本質である「よみがえりの旅」を体感できることにあります。