明治の中頃まで、高野街道の宿場として京・大坂からの高野山参詣客でにぎわった和歌山県橋本市柱本の紀見峠を訪ねます。ふもとの大阪府河内長野市天見地区から標高400mの峠につづく旧高野街道は、世界的数学者で文化勲章を受章した岡潔博士(1901~78)の頭脳をはぐくんだみちでもありました。 博士は幼い頃、祖父から「人を先にして自分を後にせよ」という教えを受け、高野街道ぞいの豊かな歴史と自然のなかで「情緒」を養いました。大学での職を失い帰郷、数学に打ち込んだ13年間、博士が思索をかさねた高野街道は一部が廃道になっていましたが近年、「情緒の道」として復活しました。岡家の墓所や博士の顕彰碑などゆかりの場所をたどります。4月に橋本市が開館を予定している岡潔記念館も見学します。